高校名人の将棋ブログ

楽しみながら、強くなる。

角換わり腰掛銀②放牧定跡はなぜ指されなくなったのか?

こんにちは、ゆーしゃんです。

今回も前回に引き続き角換わり腰掛銀の

変化を掘り下げていきます。

最後までお付き合い下されば

幸いに思います。

 

さて、今回のテーマは放牧定跡。

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放牧定跡とは?

放牧定跡とは、2019年8月29日に行われた

叡王戦七段予選の村山七段vs藤井聡七段戦(段位は当時)

で村山七段が用いた作戦です。

それ以降は、藤井二冠を中心に公式戦で

指されて定跡化されました。

ちなみに放牧定跡という定跡名の由来については

筆者にも分かりかねます(苦)

 

しかし、今では公式戦で全く見ない定跡になりました。

マチュア将棋では稀に指されているようですが。

 

今回は、なぜ放牧定跡が指されなくなったのかを

自分なりの見解をもとにお伝えします。

参考になれば嬉しいです。

 

初手からの指し手

▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩

▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成

▲同 銀 △2二銀 ▲4八銀 △3三銀
▲7八金 △3二金 ▲4六歩 △6二銀

▲4七銀 △6四歩 ▲6八玉 △6三銀

▲3六歩 △7四歩 ▲3七桂 △4二玉
▲9六歩 △9四歩 ▲1六歩 △1四歩

▲2九飛 △7三桂 ▲4八金 △8一飛

▲6六歩 △6二金 ▲5六銀 △5四銀
▲2五歩 △5二玉 ▲7九玉 △4二玉

▲8八玉 (図)
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先手は▲8八玉と上がらず▲4五桂と攻める

指し方もあります。

後手の形はプロでもよく指されている

5二玉→4二玉手待ちですね。

 

△6五歩 ▲同歩 △同桂 ▲6六銀

△6四歩 ▲4五歩

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△8六歩 ▲同歩 △同飛  ▲8七歩

△8一飛 ▲4六角 △6三金 ▲2四歩

△同銀 ▲5五銀左

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▲2四歩△同銀を利かしてから

この銀ぶつけが狙いの筋です。

ちなみに▲2四歩に対して△同歩だと

▲2五歩の継ぎ歩が厳しいです。

 

△5五同銀 ▲同角 △5四金

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この金が驚きの一着。

2つの意味があり、1つは▲7二銀のケア

もう1つはその後の手順を見れば分かります。

 

▲1一角成 △3三桂

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この桂跳ねが後手の狙いだったのですね。

桂で馬の効きを遮断しつつ、8一の飛車で

馬取りになっていて、非常に味のいい一手です。

 

この局面で先手の指し手は2つに分かれます。

まずは①▲2一銀から見ていきます。

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この一手は2019年10月18日に行われた

王将戦挑戦者決定リーグの糸谷八段vs藤井七段の将棋です。

 

△7五歩 ▲6六歩 △7六歩 ▲6五銀

△同歩

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ここで糸谷-藤井戦は▲3二銀成としましたが、

悪手のようで、以下は藤井七段が

鮮やかな収束を見せました。

 

代えて、a.▲8六香とb.▲2七香についてみていきます。

▲8六香 △8五歩 ▲同香 △同飛

▲3二銀成 △同玉 ▲4六桂 △7七香

▲同桂 △同歩成 ▲同金 △6八銀

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▲8六香の意味は、

飛車の横筋をそらすことでしたが、

その後は攻め合いになります。

先手は、この一手が詰めろになるのが痛い。

詰み手順:△7七銀成▲同玉△7六歩▲6八玉

△6七銀▲同玉△5五桂▲6八玉△6七銀

▲5九玉△4七桂不成▲4九玉△2七角▲同飛

△3九金まで。

よって、この筋は先手の負け筋です。

 

b.▲2七香の変化はどうでしょうか?

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▲2七香 △6六歩 ▲2四香 △6七銀

▲3二銀成 △同玉 ▲2三香成 △4一玉

▲7九銀 △7七銀

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やはり攻め合いになりますが、

先手が競り負けそうです。

 

よって、①▲2一銀の変化は

後手有利という結論になりそうです。

代えて、②▲6六歩を見ていきましょう。

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▲6六歩は村山-藤井戦で現れた一着でした。

これは驚きの一手です。

なんせ、先手の馬が取られてしまうので。

しかし、それは先手にとって

織り込み済みということですね。

桂香と角の交換の二枚替えで

先手も指せるということでしょう。

 

一方、藤井七段はこの局面で△7五歩とし、

馬を取りませんでした。

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これまた面白い一着です。

馬はいつでも取れる、

取られそうな桂馬を活用したい、

そういう意味でしょう。

この辺りの応酬が

放牧定跡の面白いところです。

以下は、▲6五歩△7六歩▲6四歩△1一飛

▲6三歩成と進みましたが、

そこで藤井七段が△7五角と悪手を指し、

村山七段が的確に咎めて勝利しました。

代えて△6六角なら難しいようです。

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この局面、コンピュータでも形勢判断が

できないような難解な局面で、

当時は話題になった局面です。

どちらを持っても

指せる局面ではないでしょうか。

 

後手としては、△7五歩以外に

△8六歩という一手があるようです。

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この一手が後手の最善とされています。

さて、放牧定跡の終わりが見えてきました。

 

▲8六同歩 △8五歩 ▲同歩 △1一飛 

▲6五歩 △同金 ▲同銀 △同歩

▲7七銀

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△7五歩 ▲同歩 △8六歩 ▲同銀

△6六歩 ▲6八歩 △7六銀 ▲7七金打

△同銀成 ▲同銀 △9五歩 ▲同歩

△同香 ▲同香 △8六歩 ▲同銀

△9六金 ▲8七銀 △6五角

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放牧定跡は結局、

この変化に行きつくと思われます。

評価値は-300です。

先手はかなり攻められていて

気持ち悪いですよね。

(動く将棋盤①)

 

これらの変化があり、

私は放牧定跡を後手有利と

結論づけています

放牧定跡は角換わりらしい

華麗な定跡という印象ですが、

いかんせん先手が攻められすぎて

いるように思われます。

先手番ならもっと攻める形があり、

わざわざ放牧定跡を選ばないというのが

プロの方の考え方でしょうか。

(筆者はプロではないのであくまで推測ですが。)

 

しかし、少し形が変われば結論は変わるというもの。

下図がその例です。

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この図は先手が2六歩型。

後手は7二金→6二金と手待ちする形です。

この形だと、放牧定跡の手順で進めば

先手が有利になります

一例を挙げると、

△6五歩 ▲同歩 △同桂 ▲6六銀

△6四歩 ▲4五歩 △8六歩 ▲同歩

△同飛 ▲8七歩 △8一飛 ▲4六角

△6三金 ▲2五桂

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この一手が2六歩型ならではの一着。

ここで△2四銀とすると、同じように進んだときに・・・

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▲3三桂成△同銀▲同馬△同金▲6六歩とすれば、

馬がただで取られず、またスムーズに相手の桂馬を

処理することができます。評価値は300。

(動く将棋盤②)

 

また、△2四銀の局面で△2二銀とするのも・・・

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壁銀になり、▲5五銀左△同銀▲同銀とすれば、

次の▲7二銀がより強烈になります。

また、▲6六歩も狙っていますね。

 

このように、2六歩型であれば

放牧定跡の手順は先手が有利

ということになります。

実戦で試してみる価値はありそうですね。

 

動く将棋盤はここから

 

今回は、長々と放牧定跡について

語ってしまいました(汗)

次回以降も角換わり腰掛銀の変化について

お伝えできればと思います。

ではまた次回、お会いしましょう。

ありがとうございました。